人生100年時代とは言え、老いる前にある程度の身辺整理をやっておきたいものです。そのひとつに、自分の財産についての整理があります。
よく、「遺言書を書いておこう」と言われますが、「何を書けばいいかわからない」のが実情ではないのでしょうか。まずは、遺言書を書く前に 自分の財産がいったいどの程度あるのかを明確にしておくことから始めましょう。
その際、残っている住宅ローンや車のローンなどのマイナスの財産もリストアップしておくことが大事です。
プラスの財産もマイナスの財産も再確認することによって、マイナスの財産を繰り上げ返済したり、元気なら早期返済のためのアルバイトをすることもできます。
全財産とは
全財産には預貯金や不動産などプラスの財産だけでなく、借入金や未払金なども含まれています。
全財産のリストを作成するにあたって、プラスの財産だけをピックアップしがちですが、相続を考えた場合、遺族はマイナスの財産も引き継がなければなりません。
遺族が戸惑わないように、負の財産も明記しておきましょう。
もちろん、精算できるものなら一刻も早くマイナスの財産はなくしておくのが理想です。
全財産のリストは財産目録になります。
「財産というほどのものはないから、お父さんが亡くなったらお母さんと兄弟で仲良く分けてくれ」などと言って、全財産を明確にせずに先延ばしにしていると、もしもの時に身内の間でトラブルになる可能性もあります。
現実に1000万円以下の小額の相続で全体の約32%がもめ、5000万円以下の相続で約42%がもめているようです。遺産相続によるトラブルのうち約74%が5000万円以下といったいったデータがあります。
そして、「うちは財産がないからもめることはないだろう」とは言い切れません。
自分の財産がいったいいくらあり、借金はいくらあるのかなど、お金に関することをまとめておく「お金の終活」は、終活にとりかかった時点で一番初めにおこなっておくべきことなのです。
財産の種類について
財産の種類、数量、所在、価額などをまとめて一覧表を作っておきましょう。
・不動産
自宅の土地、建物、店舗、農地などです。借地権、借家権 なども不動産です。
建物の横のゴミ置き場などが自分の土地であったりすることもあるので、明確にしておきましょう。
不動産の土地は(〇〇番地〇)と地番まで表示しておき、建物に関しては「家屋番号」があれば記載しておきます。
・預貯金
普通預金、定期預金などの、「銀行名」「銀行の支店名」、「預金種目」「口座番号」、「金額」の欄を設けて記載しておきます。
休眠口座などが無いかどうかも、しっかり調べておきます。
預貯金については、転勤族の人は各地で作った口座が休眠状態になっている場合もありうるのでチェックしておきましょう。
また、本人名義の預貯金は、口座の名義人が死亡したことを金融機関が知った時点で、ロックがかかってしまい、家族が引き出すことができなくなります。
葬儀費用なども払えなくなるような状態を避けるためにも、とりあえず引き出せる普通預金の通帳とカードの暗証番号は、目立つように記載しておきましょう。
・有価証券(株式、債券、投資信託など)
「種別」、「銘柄」、「口座番号」、株数などの「数量」を記載しておきます。
株式については、配当金を郵便局の窓口で受け取っている人は、口座への自動入金方式に変えておくと便利です。
単元未満株は相続の移管手続きが面倒なので、証券会社に買い取ってもらっておくのが無難かも知れません。
・生命保険、年金
「種別」、「保険会社名」、「証券番号」、「保険金額」、「受取人氏名」を記載します。
・その他の動産
たとえば、自動車や趣味の美術品、骨董品、貴金属なども相続財産となります。
テレビや冷蔵庫、家具など家庭用の物品も動産とみなされます。
それぞれ「種類」、「名称・詳細」、「金額」を記載します。
また、ゴルフなどの会員権についてもゴルフ場の名前、運営会社、会員番号などを記載しておきましょう。
その他にも、キャッシュカードには電子マネーの残金があるかもしれないので確認しておきましょう。
・負の財産について
住宅ローンや自動車ローン、その他の借金、住民税、固定資産税、所得税などの税金の未払い分などが負の財産になります。もし、プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合は、遺族は相続放棄をする必要がありますが、期限があります。
遺族は、3ヵ月以内に相続放棄の決断をする必要があるので、マイナスの財産がある場合は包み隠さず書き残しておくことが大事です。連帯保証債務なども書きもれがないようにしましょう。
生前にマイナスの財産についても明記した「財産のリスト表」を作っておと、遺族の負担が軽減されます。たとえプラスの財産が残せなくても、プラスマイナスがゼロであれば、上手に人生を送れたことになります。遺族もよけいな争いをせずに、仲良く暮らすことができるかも知れません。後々で借金が分かるようなことだけはしないようにしておきましょう。
「財産のリスト表」は「財産目録」として使えるの?
「財産のリスト表」イコール「財産目録」といえます。
法律で定められたものでもなく、税務署へ提出する書類でもないため、覚え書きのようなものです。
重要なことは、記入日を書いて定期的に更新することと、その存在や保管場所を、家族に知らせておくことです。
負債も含めた資産に関連することをきちんと整理して残しておくことで、遺族の負担が軽減されます。
もし相続財産に負の財産があることがわかっても、プラスの財産と差し引きすると果たしてどうなるのかを計算して、相続放棄するかどうかといった決断をするまでの期限は3ヵ月しかありません。
この間に健康保険や遺族年金の手続きもおこない、4ヵ月以内には、故人の所得税を申告する必要もあります。
財産のリスト表があるかないかで、遺族の心身の負担が違ってきます。
核家族化や、子どもを持たない世帯、一人世帯など、家族の在り方も様々です。
家族関係も希薄になっている現状だからこそ、まずは「財産のリスト表」を作っておくようにしましょう。
生前のうちに財産を整理しておくことのメリット
特に遺言書を残さない場合は、相続人が遺産分割協議をして遺産分割協議書の作成を行います。
その後、相続財産の名義変更や登記を行い、相続税の申告と納付を行います。
これらの手続きは相続が発生してから10ヵ月以内に終了させます。
生前のうちに財産を整理して「財産のリスト表」を作成しておくことで、遺族が相続税申告書を作成する際に、それを転記するだけですみます。
また、相続人の間で遺産分割協議をスムーズに進めることができます。
「立つ鳥跡を濁さず」といいますが、生前に「財産のリスト表」を作成しておくことで本人も思い残すことなく旅立つことができます。
まとめ
相続財産とは、お金に換算できるすべてのものです。
相続の対象となるの預貯金や不動産などだけではなく、借入金や未払金なども含まれます。
プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合は、遺族は相続放棄をする必要があります。
お金に関するすべてのことをオープンにした「財産のリスト表」を生前に作成し、毎年書き直しておくことで遺族の負担が軽減されます。
「まだまだ早い、そのうちに何とかしなければ」と思っているうちに月日は過ぎていきます。
早速「財産のリスト表」を作成しましょう。